実在の連続猟奇殺人鬼/事件について歌ったヒットソング8選

世界を震撼させた恐怖の連続殺人と、それらの犯行に及んだシリアルキラー

 

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悪魔的でダークな世界観と非常に親和性の高いロック/メタル/グラインドコアは、そんな血生臭い歴史上の狂人たちをテーマにした楽曲が多く、事件の凄惨さとは裏腹に、音楽ファンに愛されるヒットソングになっているものもあります。

そこで今回は「What Culture」が選出した、実在の連続猟奇殺人鬼について歌っているヒットソングを8曲ご紹介します。


8:オジー・オズボーン/『ブラッドバス・イン・パラダイス』

 

カルト宗教を立ち上げ、家出少女たちを勧誘し「ファミリー」として共同生活を送り、彼女たちに5件の無差別殺人を指示したことから、殺人罪共謀罪で死刑(後に刑法が変わり終身刑に減刑)を食らったチャールズ・マンソンについてオジーが歌ったのがこの曲。

直訳すると「楽園の大虐殺」となるこの曲の歌詞は以下のような内容。

 

お前が家に帰ると、壁には鮮血がチャーリーとファミリーがお前の家にやって来る時もしお前が独りっきりなら何をするのか観ているだろう何故ならチャーリーとファミリーはお前を捕まえに来る暗闇の中で彼らが聴こえるか? 螺旋の階段、渦巻く狂気

 

1969年には妊娠中の女優シャロン・テートがファミリーのメンバーが殺害し、世間を騒がせましたが、オジーがこの曲を発表したのは1988年。どれほどチャールズ・マンソンが後世に影響を及ぼした人物なのかがおわかりになるかと思います。

ちなみに「螺旋の階段」はビートルズの曲『ヘルター・スケルター』が由来で、チャーリーは白人と黒人の最終戦争をそう呼んでいたことでも有名な言葉です。


7:タイラー・ザ・クリエイター/『ブロウ』

 

お聴きの通り、この曲はラップ/ヒップ・ホップですが、取り分けダークなテーマのラップは「ホラーコア」というジャンルに位置付けられることがあります。

そしてこの曲は、正確な人数は判らないものの、最低でも30人以上の若い女性たちを強姦殺人し続けた、テッド・バンディーについて歌った曲です。

ウィキペディアによると、バンディーの手口は「少女や若い女性を言葉巧みに誘い、無防備状態にさせてから相手を殴りつけて意識を失わせ、それから性行為を行う。アナルセックスが気に入りであったとされる。その後に殺害し、死体を遠くまで運んで切り刻み、切断し、淫らな行為をしたうえに屍姦を行い、数日後に死体の場所に戻ってから、切り取った女性の頭部の口の中に射精した」という、けだもののような所業でした。

「世間を震撼させたシリアルキラー/連続殺人鬼たちのプロファイリングと捕まり方」でも触れましたが、1984年に初めて「シリアルキラー」という単語が作られたのは、このテッド・バンディーがきっかけというほど、連続殺人鬼の元祖である男です。歌詞ではこう綴られています。

 

ベイビー、君は天使だオレたちふたりを神話か何かにしてしまうっていうのはどうだい?キミはもう死んでいるってことを知っている皮肉な因果だが、もちろんキミの口紅は真っ赤だオレはお前をトランクに詰め込む、酔っぱらっている何故ならオレが本当にしたいことはお前をファックして鼻息で吹き飛ばすことなんだ

 

割りとハンサムな顔立ちで、女性たちを誘いやすかったというバンディー。しかし、「特徴的ではない顔」というのが特徴だったため、ヒゲや髪型などを変えるだけのちょっとした変装をするだけで、誰にも気付かれなかったのだそうです。


6:ザ・スミス/『サファー・リトル・チルドレン

 

ザ・スミスは、モリッシーがヴォーカルを担当するイギリスのバンドですが、この曲はイギリス・マンチェスターを舞台に全英を震え上がらせた、「ムーアズ殺人事件」にインスパイアーされて書かれています。

この連続殺人は、1960年代半ばに少年少女5人が性的暴行を受けた後に殺され、埋められた事件。

犯人はイアン・ブレイディーとマイラ・ヒンドリーというカップルによるもので、インテリで読書好きのブレイディーはマルキ・ド・サドの『悪徳の栄え』と、アドルフ・ヒトラーの『我が闘争』(ドイツ語版)にドップリとハマり、後に出会ったヒンドリーにその思想を植え付け、SMプレイに傾倒。

さらに2人で誘拐した少年少女を拷問・強姦・殺害し、自らもその現場での行為を撮影&録音していたのでした(後にこれが証拠となる)。

 

ムーアの向こう、ムーアに連れて行ってくれ浅い墓穴を掘って、私は自分をそこに横たわらせるレスリー・アン、可愛い白いビーズと一緒におぉジョン、君は大人の男になることはないだろうそして二度と自分の家を見ることはないだろうおぉマンチェスター、答えることがたくさん有るな

 

この曲は事件から20年経ってからのリリースなのですが、被害者たちの実名が歌われていることから、今でも度々議論の的になり、たまたま、この曲を耳にした被害者の親族から抗議もあったそうです。しかし、歌詞は子供達に対して同情の意を表すものとのこと。

参考:世界の猟奇殺人者


5:ザ・タイガー・リリーズ/『ジャック』

 

カルト的人気を誇るロンドンのミュージカル・トリオが、ジャック・ザ・リッパー切り裂きジャック)について歌ったのがこの曲。

この事件は1888年の8月から約2ヶ月間で、ロンドンの売春婦5人(もしくはそれ以上?)がバラバラにされた連続殺人ですが、未だに犯人が判らず、謎が多いため、さまざまなメディアがテーマに扱っているものでもあります。

 

家に帰って祈れジャックおぉ、死体の上で自慰行為に耽るかジャック?ステキなファッキン・オ○ニーを楽しんでいるのか?繰り返し行われる再犯行、淫乱な想い?それともお前は怒っているのかジャック? 怒っているのか?オレたちはお前が怒っているって知っているんだぜジャックしかしお前さん自身は判っているのか?

 

一歩離れたところからジャックを客観視している歌詞と相まって、ピエロのようなメイクで歌うでもなく語りかける、異様な雰囲気のビデオとなっています。


4:マッドヴェイン/『ナッシング・トゥ・ゲイン』

 

長年に渡り、ホラー映画『悪魔のいけにえ』の元ネタになったと思われていたものの、事実確認で「真実ではない」という結論に至ってしまった、人皮職人エド・ゲインを歌ったのがこの曲。

歌うのは、奇妙奇天烈かつキワモノの様相でデヴューしたメタル・バンドのマッドヴェイン。見てくれのインパクトだけでなく、歌唱力や演奏力も卓越したものを持っているバンドです。

墓場に埋められた女性たちと、殺害した2人を合わせた15人の皮膚を剥いでなめし、家具や衣料、食器などを縫製していたゲイン。曲の歌詞はこのように書かれています。

 

変装するために、切断し縫い合わせた新しい衣装新鮮な死体の前掛け、剥ぎとった毛髪、共にオレの顔を覆う皮彼女の大地の母胎からの遺物を届ける棚を準備し、新たな愛が再び誕生するため縛り上げる未熟な手術の隠された理解集中に注視し必要なものだけ使おう病のため、俺は砕いてこねる踊りながら自慰行為に耽る俺の顔にかぶせた皮膚と共に夜の野原で祝祭をする

 

「ナッシング・トゥ・ルーズ(失うものは何もない)」というフレーズはよく耳にしますが、この題名は逆に「得る(または増える)ものは何もない」となっています。しかし「得る」の「ゲイン」がエド・ゲインの苗字の綴りに変えられており、一種のダジャレのような言葉遊びにすることでエド・ゲインの歌とわかるようになっているのがキモです。

狂信的なルター派の家庭で育った、エドの母オーガスタ。彼女の息子たちに対する教育が極めて偏っていたにも関わらず、エドは母を心から愛し唯一の友だと考えていました。

この歌は、そんなエドの心情と夜な夜な女性の頭皮や乳房のベストを身につけ、切り取った女性器を自分のナニに巻き付けて農場内を歩き回ったりした異常行動にも言及しています。

ゲインの凶行はウィキペディアでどうぞ。


3:マカブラ/『シニスター・スローター』

 

イリノイ州シカゴ出身のデスメタル・バンド、マカブラが歌うのは1人ではなく、何人もの連続殺人鬼。曲ごとにゾディアック事件やテッド・バンディー、「ミルウォーキーの食人鬼」ことジェフリー・ダーマーなどの殺人事件や猟奇的殺人鬼について歌っています。

ここでは、スティーヴン・キングの『IT』に登場するピエロのモデルとなったことでも有名な、ジョン・ゲイシーについての歌、『Gacy's Lot』の歌詞を抜粋します。彼は同性愛者で、性交後に殺害した青少年は33人にも及び、家の地下から腐敗した死体がゴロゴロ出てきて逮捕された人物です。

 

誰か、素早く捕まえて腐らせた少年たちが取り残されたゲイシーの敷地が欲しいヤツはいるか?誰もゲイシーが石灰で袋詰めにした少年たちを植えた敷地なんて欲しがりやしない誰か、ゲイシーが少年たちの首を絞め七転八倒した敷地を買いたいか?ジョン(・ゲイシー)が(少年たちを)腐らせるために放っておいた敷地は誰かが買って、名所を建てたんだ

 

お気付きの方もおられるかもしれませんが、このアルバムのジャケットは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のパロディーで、シリアルキラーたちの顔が描かれている、素晴らしく不謹慎なものとなっています。


2:スレイヤー/『デッド・スキン・マスク』

 

スラッシュ・メタル四天王としてもおなじみのモンスター・バンド、スレイヤーによる曲。彼らが歌うのは上記4番のマッドヴェイン同様に、エド・ゲインについてです。歌詞を翻訳するとこんな感じ。

 

指先で皮を剥ぐ冷たい死肉のブラシが意味を鎮静させる刺激的な映像が顔立ちを滑らかで壊れやすくする月光の中の愉しい芳香夢の中で死者と踊る彼らの空虚な叫び声を聴く死者たちの空虚な叫び語を聴く死者が俺の魂を奪い去った誘惑がすべての制御を失わす

 

ミドル・テンポで女性か子供かの声も入った不気味さが、何とも言えない印象を残す一曲です。「約束するよ、お前を長い間置いておかない、永遠に側に置いておくよ」なんていうゲインが本当に死肉に向かって言いそうな歌詞も薄気味悪く、リフもソロもベースもドラムも、すべてが血生臭いアンサンブルを奏でています。

スレイヤーは他にも、アウシュビッツ強制収容所ナチス将校で医師のヨーゼフ・メンゲレや、ロシアの殺人鬼アンドレイ・チカチーロについて書いた曲などもあります。


1:スワンズ/『キリング・フォーカンパニー』

 

1983年に事件が発覚し、英国を恐怖のドン底に突き落とした連続猟奇殺人犯人デニス・ニルセン。彼は1978年から5年間、若い男性たちを絞め殺し、風呂場で丁寧に洗い服を着せ、ベッドで一緒に寝ながら自慰や屍姦をし、腐った死体にすら興奮を覚えるも最後は切り刻んであちこちに捨てたり鍋で煮て溶かしたり、トイレに流してアパートの下水管を詰まらせたのでした。

報告を受けて調査に来た水道局職員は、地下の下水道が溶けた肉だらけの地獄絵図になっていたことに腰を抜かし、その深夜にニルセンが証拠隠滅を企て掃除をしていたところを目撃されたのが発覚のきっかけとなった......という異常な事件でした。

そして、この殺人鬼ニルセンについて歌ったのが、ニューヨークのエクスペリメンタル・ロック/ポストパンク・バンドのスワンズです。「自分の恋人として、友達としてずっと相手にして欲しかったから殺した」という殺人の動機をそのままタイトルにしており、その歌詞はこう綴られています。

 

キミの素肌に口づけしても良いかな?砂漠にある空腹感、そして空を飛ぶ誘導弾の数々そしてすべての魂は正負が決まるより前に織り交ぜられる私は我々が再び生き長らえるであろうことを知っているそれはただの感覚だけれども我々に終わりはないのだって知っているんだ今となっては始まりなんて在りはしないそして夜、寒い時に私はキミの柔らかな肌に口づける我々に終わりはないんだキミの相手をしてあげるよ

 

これはスワンズがゴシック期に入った時に作られた曲だそうで、だからこその気怠い曲調と狂った世界が絶妙にマッチしています。イギリス版ジェフリー・ダーマーとも呼ばれる、この事件のあらましを知っていれば、そのグロテスクさがありありと目に浮かぶような気さえしてきます。

TERA RMT